インド🇮🇳ラジャスタン州に位置する「ランタンボール国立公園」は、野生のベンガルトラが生息することで知られています。

野生のトラを見ることができる代表的な国立公園の一つであり、「トラを見てみたい!」と考える人なら、一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
乾燥した森林や岩山、いくつもの湖、草地が組み合わさった景観は、インドの湿潤な熱帯林とは異なる特徴があります。
さらに、ランタンボールを象徴するもう一つの存在が「ランタンボール城」です。自然の地形を利用して築かれたこの城には、人々が自然と関わりながら歴史を重ねてきた痕跡が残されています。

「狩猟地」から「保護区」へと変化した歴史を丁寧に紐解くことで、人間と自然の関係、そしてこれからの私たちのあり方を考えるきっかけとなる場所でもあるのではないでしょうか。
本記事では、このランタンボール国立公園にどのような自然環境が広がり、どのような野生動物が生息しているのか、さらにはその歴史についても紹介していきます。
ランタンボール国立公園とは
インド・ラジャスタン州に位置する国立公園
ランタンボール国立公園(Ranthambore National Park)は、インド北西部のラジャスタン州南東部、サワイ・マドプール県に位置する国立公園です。

州都ジャイプールから南東方向にあり、最寄りの都市であるサワイ・マドプールの市街地からは約14kmの距離に位置しています。
公園は、インドでも古い地質を持つアラバリ山脈とヴィンディヤ山地が接する地域に広がっています。岩山や起伏のある丘陵、谷、湖、草地など、変化に富んだ地形が特徴です。
また、公園内には森林に囲まれた丘の上に「ランタンボール城(Ranthambore Fort)」がそびえています。「ランタンボール」という公園の名称は、この城に由来しています。
ランタンボール城は、10世紀に建設されたとされる歴史ある城塞で、2013年にはユネスコ世界遺産「ラジャスタンの丘陵城塞群」の一つとして登録されました。
この城の特徴は、周囲の自然地形を防御に利用していることです。丘陵の高低差に加え、周囲に広がる森林も城を守る役割を果たしてきました。
現在、トラなどの野生動物が生息する森には、かつて人々が暮らし、城を築き、土地を利用してきた歴史が重なっています。
国立公園とトラ保護区の違い
ランタンボールについて調べると、「ランタンボール国立公園(Ranthambore National Park)」と「ランタンボール・トラ保護区(Ranthambore Tiger Reserve)」という2つの名称が登場します。
この2つは同じ場所を指しているように見えますが、厳密には保護対象となる区域が異なります。
ランタンボール国立公園は、野生動物や自然環境を保護するために指定された国立公園で、面積は282.03km²です。
一方、ランタンボール・トラ保護区は、国立公園に加えて周辺の野生動物保護区や森林なども含む、より広い保全区域を指します。
ラジャスタン州森林局の保護地域一覧では、トラ保護区全体の面積は1,530.23km²と公表されています。
この広域の保護区には、ランタンボール国立公園のほか、ケラデヴィ野生動物保護区(Keladevi Wildlife Sanctuary)やサワイ・マン・シン野生動物保護区(Sawai Man Singh Wildlife Sanctuary)なども含まれています。
トラ保護区は、保全上の役割に応じて「コアエリア(Core Area)」と「バッファーエリア(Buffer Area)」に区分されています。

コアエリアは、トラの生息や繁殖にとって特に重要な区域です。野生動物の生息環境を保全することを優先し、人間の活動に対して厳しい管理が行われています。ランタンボール国立公園も、このコアエリアの一部に含まれます。
バッファーエリアは、コアエリアに隣接する森林などを含む区域です。野生動物が移動するための生息環境を維持するとともに、地域住民の暮らしにも配慮しながら、人間と野生動物の共存を図る役割を担っています。
乾燥した森林と岩山が広がるランタンボールの自然
アラバリ山脈とヴィンディヤ山地が出会う場所
ランタンボール国立公園は、インド北西部に広がるアラバリ山脈と、インド中部に広がるヴィンディヤ山地が接する地域に位置しています。



この2つの山地の境界付近には、「グレート・バウンダリー断層(Great Boundary Fault)」と呼ばれる地質構造があり、ランタンボールの複雑な地形を特徴づけています。
公園内には、険しい岩山や切り立った崖、なだらかな丘陵、平坦な草地、谷など、さまざまな地形が広がっています。
グレート・バウンダリー断層(Great Boundary Fault)とは?
インド北西部に延びる大規模な断層で、アラバリ山脈側とヴィンディヤ山地側の異なる地質を隔てる境界です。
ランタンボールは、この2つの山地が接する場所に位置しています。
アラバリ山脈側にはとがった尾根や円錐形に近い丘が多く、ヴィンディヤ山地側には頂上が平らな台地状の丘が見られます。

このように異なる地形が隣り合っていることが、ランタンボールの特徴の一つです。
こうした地形の違いは、そこに生育する植物や、野生動物が利用する環境にも影響を与えています。
例えば、岩肌が露出して土壌の薄い場所では、樹木がまばらになり、低木や草本植物が中心となります。
一方、土壌が比較的厚く、水分を保持しやすい緩やかな斜面では、樹木や低木がより豊かに生育しています。
谷間には雨水が流れ込む場所もあり、周囲の乾燥した斜面とは異なる植生が見られます。
同じランタンボールの森でも、地形によって水分や植生の状態が異なり、それぞれが野生動物の生息場所となっているのです。
ランタンボールを代表する乾燥落葉樹林
ランタンボールの森林は、主に「熱帯乾燥落葉樹林(Tropical Dry Deciduous Forest)」に分類されます。
熱帯乾燥落葉樹林とは、気温が比較的高い地域のうち、雨が多い季節と乾燥する季節が明確に分かれた場所に成立する森林です。
年間を通して多くの樹木が葉を茂らせる湿潤な熱帯林とは異なり、乾燥する時期には葉を落とす樹木が多く見られます。
ランタンボールの森林を代表する樹木が、ドーク(Dhok/Dhonk、学名:Terminalia pendula、旧学名:Anogeissus pendula)です。

ドークは、ランタンボールの乾燥した丘陵や斜面に広く分布する落葉樹で、国立公園の景観を形づくる主要な樹種の一つです。
ドークのほかにも、アカシア類やナツメ属(Ziziphus)の植物、イチジク類など、さまざまな樹木や低木が生育しています。

これらの植物が均一に広がっているわけではなく、岩山や斜面、谷間などの環境によって森林の構成は異なります。
また、公園内には樹木が密集した森林だけでなく、低木が広がる場所や、草本植物が中心となる開けた土地も存在します。
そのため、ランタンボールは一般的に想像されるような、背の高い木々に覆われた緑豊かなジャングルとは異なる景観を持っています。
乾燥した森と開けた草地、岩山が入り組んでいることが、ランタンボールの自然環境の大きな特徴です。
雨季と乾季で変わる森の姿
ランタンボールの自然環境は、季節によって大きく変化します。
雨が多くなるのは、主に6月から9月頃のモンスーン期です。
雨季には乾燥していた土地に水が供給され、草本植物が成長し、樹木も葉を茂らせます。
普段は乾いている水路に水が流れ、岩山や草地を含めた森全体が緑に覆われていきます。

一方、雨季が終わると降水量は少なくなり、乾燥した季節へと移っていきます。
冬には気温が下がり、春から初夏にかけては気温が上昇します。
特に夏の乾季は高温となり、水の確保が野生動物にとって重要になります。
乾燥が進むにつれて落葉樹は葉を落とし、草地の植物も枯れるなど、雨季とは大きく異なる景観になります。

こうした季節の変化は、植物だけでなく野生動物の行動にも影響を与えます。
雨季には草や水がさまざまな場所で得られるため、草食動物は比較的広い範囲を利用できます。
一方、乾季に水が不足すると、水の残る谷間や湖、水場などを利用するようになります。
そして、草食動物を獲物とするトラなどの捕食動物にとっても、獲物の分布は重要な要素となります。
つまり、ランタンボールでは季節による水と植物の変化が、野生動物の暮らしを大きく左右しているのです。
乾燥した森の生命を支える湖と水辺
ランタンボールの代表的な湖
乾燥した森林が広がるランタンボールには、複数の湖や水場が存在します。
なかでも代表的なのが、パダム湖(Padam Talao)、ラージバーグ湖(Rajbagh Talao)、マリク湖(Malik Talao)の3つです。
これらの湖はランタンボール城の周辺に位置しており、城塞からも見渡すことができます。
パダム湖(Padam Talao)

ランタンボールを代表する湖の一つで、サファリゾーン3のルートに含まれています。

湖畔には「ジョギ・マハル(Jogi Mahal)」と呼ばれる歴史的建造物があり、周囲には森林や丘陵が広がっています。

ラージバーグ湖(Rajbagh Talao)

ラージバーグ湖は、周囲の森林と古い石造建築の遺構が重なる景観で知られています。
こちらもサファリゾーン3のルートに含まれる湖です。
湖の周辺には、トラをはじめとする野生動物が生息しています。
マリク湖(Malik Talao)
マリク湖も、ランタンボールの重要な水辺環境の一つです。サファリゾーン4のルートに含まれます。
ほかの湖とともに、水生植物や水辺を利用する野生動物の生息場所となっています。
こうした湖は景観としての美しさだけでなく、乾燥した土地に生息する動物たちにとって重要な水源でもあります。
水辺に集まる野生動物たち
ランタンボールでは、季節によって利用できる水の量や場所が変化します。
特に乾季が進むと、雨季には水が流れていた小川や水路が干上がり、水を得られる場所が限られていきます。
そのため、湖や水が残る場所は、野生動物にとって重要な環境となります。
サンバーやアクシスジカ、イノシシなどの動物は、水を飲むために湖や水場を利用します。



また、水辺にはトラやインドヒョウなどの捕食動物も姿を現します。


水場は動物が水を飲む場所であると同時に、草食動物と捕食動物の活動が重なる場所でもあります。
トラは水を飲むだけでなく、暑いときには水の中に入って体を冷やすこともあります。
湖の周辺では哺乳類だけでなく、水鳥やワニなどの生き物も見られます。
ランタンボールに生息するヌマワニは、湖や湿地などの淡水環境を利用する大型の爬虫類です。

水鳥にとっても、湖は採食や休息の場となります。
このように、水辺はさまざまな生き物が集まり、それぞれの活動が重なる場所となっています。
水があることで生まれる多様な生息環境
ランタンボールの生態系を支えているのは、湖だけではありません。
公園内には、季節によって水が流れる小川や谷間の水たまり、湿地などが存在します。
これらの水辺と周囲の森林、草地が組み合わさることで、異なる特徴を持つ生息環境が生まれています。
例えば、水分を保持しやすい谷間では、乾燥した斜面よりも樹木や下草が豊かに育つ場所があります。
一方、湖の周辺ではハスやスイレンなどの水生植物も見られ、水中や水辺を利用する生き物の生息場所となっています。

また、ランタンボールには自然の水場だけでなく、堰や池など、人間が整備してきた水場もあります。
これらは水が不足する季節に野生動物が利用できる水源として、保護区の管理においても重要な役割を担っています。
湖、湿地、谷間、森林、草地は、それぞれ独立した環境ではありません。
草食動物は植物を食べ、水を求めて移動し、トラなどの捕食動物も獲物の分布に応じて森を利用しています。
ランタンボールの豊かな野生動物の生態系は、乾燥した森林の中に存在する多様な水辺環境によっても支えられているのです。
トラとともに暮らすランタンボールの野生動物
トラの獲物となる草食動物
ランタンボールには、トラをはじめとする捕食動物を支える、多様な草食動物が生息しています。
なかでも、トラの主要な獲物となっているのがサンバーとアクシスジカです。
サンバー(Sambar)

サンバーは、南アジアや東南アジアに分布する大型のシカです。ランタンボールでも重要なトラの獲物となっています。
体が大きく、森林や水辺などを利用して暮らしています。
アクシスジカ(Chital/Spotted Deer)

アクシスジカは、赤褐色の体に白い斑点が並ぶことが特徴のシカです。
ランタンボールでは比較的多く生息しており、トラの食性を調べた研究でも主要な獲物として確認されています。
ニルガイ(Nilgai)

ニルガイは、インド亜大陸に分布する大型のウシ科動物です。名前に「ガイ」とありますが、家畜の牛とは異なる野生動物です。
ランタンボールにも生息しており、トラに捕食されることがあります。ただし、サンバーやアクシスジカと比較すると、主要な獲物ではありません。
イノシシ(Wild Boar)

イノシシも、ランタンボールに生息するトラの獲物の一つです。
森林や草地、水辺などを利用し、植物の根や果実、小動物など、さまざまなものを食べて暮らしています。
ランタンボールのトラの食性については、2000年から2001年に行われた研究で、サンバーとアクシスジカが主要な獲物であることが示されました。

また、2025年に発表された研究でも、トラがこれらの野生動物を主な食物としていることが確認されています。
一方で、周辺地域の家畜もトラの食物に含まれることが明らかになっており、トラの保全には、野生の獲物を維持するだけでなく、地域社会との関係を考えることも重要です。
森に生息する肉食動物
ランタンボールには、トラ以外にもさまざまな捕食動物が生息しています。
インドヒョウ(Indian Leopard)

インドヒョウは、トラと同じネコ科に属する大型の肉食動物です。
ランタンボールでは、トラと同じ森林に生息しており、岩の多い丘陵や森林などを利用して暮らしています。
シマハイエナ(Striped Hyena)

※ランタンボールで撮影された写真ではありません
シマハイエナは、インドにも分布するハイエナ科の動物です。
自ら獲物を捕食することもありますが、動物の死骸も食べるため、森の中では腐肉食動物としての役割も担っています。
カラカル(Caracal)

カラカルは、長い耳の先端に黒い毛の房があることが特徴のネコ科動物です。
ランタンボール・トラ保護区に生息することが公式資料で確認されていますが、トラやアクシスジカなどと比べると、観察する機会の少ない動物です。
ナマケグマ(Sloth Bear)

ナマケグマは、インド亜大陸に分布するクマ科の動物で、ランタンボールにも生息しています。
分類上はトラやヒョウと同じ食肉目に属しますが、主にシロアリやアリ、果実などを食べて暮らしています。
このほかにも、ジャッカルやジャングルキャット、マングース類など、多様な哺乳類が生息しています。
これらの動物は、それぞれ異なる食物や環境を利用しながら、ランタンボールの生態系の一部を担っています。
鳥類や爬虫類も含めた多様な生態系
ランタンボールに生息する野生動物は、哺乳類だけではありません。
インド政府の国家トラ保全局(NTCA)の資料では、ランタンボール・トラ保護区に315種の鳥類が記録されています。
鳥類のなかでも、インドを象徴する鳥として知られるインドクジャクは、ランタンボールでも見られる代表的な種の一つです。

また、森林にはワシ類やハゲワシ類などの猛禽類が生息し、湖や湿地には水鳥も見られます。
爬虫類では、ヌマワニのほか、ニシキヘビやコブラ、カメ類なども記録されています。

こうした多様な動物たちは、植物を食べるもの、ほかの動物を捕食するもの、死骸を食べるものなど、それぞれ異なる方法で食物を得ています。
例えば、植物を食べるシカ類はトラの獲物となり、動物の死骸は腐肉食動物などの食物になります。
さらに、植物の成長には、水や土壌、気候などの環境条件が関わっています。
植物、草食動物、捕食動物、そして水や土壌などの自然環境が互いに関わり合うことで、森全体の生態系が成り立っています。
自然と人間の歴史が重なるランタンボール
森の中に残るランタンボール城
ランタンボールを特徴づける存在は、豊かな自然や野生のトラだけではありません。
森林に囲まれた丘の上には、10世紀に建設されたとされる「ランタンボール城(Ranthambore Fort)」が残されています。

この城は、かつてラージャスターン地方を支配したラージプートの王国の歴史と深く結びついており、長い年月の中で戦いや権力争いの舞台となってきました。
ランタンボール城の大きな特徴は、周囲の自然地形を防御に利用していることです。
城は高台に築かれており、険しい岩山や崖、周囲の森林が、外部からの侵入を防ぐ天然の障壁となっていました。
人々はこの地形を利用しながら城壁や門を築き、防御のための構造を整えてきました。
城内には、宮殿の遺構や寺院、水を蓄えるための施設などが残されています。

また、城の周辺の森には、古い石造建築や、かつて人々が生活していた場所の痕跡も見られます。
現在は野生動物が暮らす森の中にも、かつて人間が自然を利用し、暮らしを営んできた歴史が残されているのです。
ランタンボール城は、2013年にユネスコ世界遺産「ラジャスタンの丘陵城塞群」の一つとして登録されました。

ユネスコも、この城を周囲の森林という自然環境を防御に利用した城塞の例として評価しています。
ランタンボールでは、自然と人間の歴史が切り離されたものではなく、同じ土地の中に重なって存在しています。
トラの生息地として守られてきた森林
現在、ランタンボールはトラの生息地として保護されていますが、その歴史をたどると、森林と人間の関係が大きく変化してきたことがわかります。
ランタンボールの森林は、かつてジャイプールの王侯家が狩猟を行う場所として利用されていました。
王侯家(おうこうけ)とは?
王や君主とその一族を指す言葉です。かつてインドには「藩王国」と呼ばれる地域の王国が数多く存在し、ジャイプールもその一つでした。ジャイプールの君主は「マハラジャ」と呼ばれ、ランタンボールの森林は王家の狩猟地として利用されていました。
当時、トラは保護すべき野生動物というだけでなく、王侯による狩猟の対象でもありました。
その後、野生動物の保護に向けた制度が整えられ、ランタンボールの森林も狩猟地から保護区へと位置づけを変えていきます。
大きな転換点となったのが、1955年のサワイ・マドプール野生動物保護区の設立です。
さらに1973年には、インド政府がトラの絶滅を防ぐために開始した「プロジェクト・タイガー」の最初の9つの対象地域の一つに選ばれました。

そして1980年11月1日、保護区の一部が「ランタンボール国立公園」として指定されました。
こうした経緯を経て、ランタンボールではトラの生息地を守るための保護政策が進められてきました。
ただし、保全の対象となるのは、国立公園の内部だけではありません。
トラが生息し、移動していくためには、周辺の森林とのつながりを維持することも重要です。
ランタンボール・トラ保護区では、周囲の保護地域や森林とのつながりを確保することが、保全上の課題の一つとなっています。
また、保護区の整備に伴い、かつて森林の中で暮らしていた村の移転も進められてきました。
そのため、ランタンボールの自然保護を考える際には、トラの生息環境だけでなく、森林を利用しながら生活してきた人々の歴史や、地域社会への影響にも目を向ける必要があります。
かつては王侯の狩猟地だった森林が、現在はトラを守るための保護区となっています。
その変化の背景には、自然に対する人間の考え方や、土地の利用方法の変化があります。
しかし、保護区の成立によって生じた人間と自然の関係は、単純に「狩猟から保護へ」という言葉だけでは説明しきれません。
こうしたランタンボールの歴史と、保護政策が地域社会に与えてきた影響については、別記事「王侯の狩猟地からトラの保護区へ|ランタンボールの歴史」で詳しく紹介します。
まとめ|ランタンボールの自然を知ることは、トラの暮らしを知ること
ランタンボール国立公園には、乾燥落葉樹林や岩山、草地、湖など、さまざまな自然環境が広がっています。
雨季と乾季によって大きく変化する森では、水や植物の分布に応じて、野生動物も生息環境を利用しています。
トラの暮らしを支えているのは、獲物となるシカやイノシシなどの動物だけではありません。
植物が育つ土壌や、乾季にも水が残る湖や谷間など、森全体の環境が重要な役割を担っています。
そして、この土地には、王侯による狩猟や城塞の建設、近代的な自然保護政策など、人間が森林と関わってきた歴史も残されています。
ランタンボールの自然を理解するためには、そこに生きる野生動物だけでなく、人々がこの森とどのように関わり、現在の保護区が形づくられてきたのかを知ることも欠かせません。
トラが暮らす森を知ることは、その命を支える生態系と、人間が自然に与えてきた影響を知ることでもあるのです。

