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ネコの日に広がった、ユキヒョウ保全の輪

WWFジャパン×円山動物園、札幌で特別イベントを開催

2026年2月22日の「ネコの日」、札幌市円山動物園で、特別イベント「ネコの日に知りたい、ユキヒョウと地球のはなし」が開催された。

出典:WWFジャパン

このイベントは、WWFジャパンと札幌市円山動物園の共催によるもの。

WWFインドで実際に西ヒマラヤのユキヒョウ保護プロジェクトを指揮するスタッフも来日し、ユキヒョウの生態や、彼らを取り巻く危機、そして未来のために何ができるのかが紹介された。

先着50名の事前申込制だったが、受付開始後すぐに定員に達するなど、関心の高さもうかがえる催しとなった。

目次

高山生態系の頂点に立つ、絶滅危惧種ユキヒョウ

ユキヒョウは、中央アジアやヒマラヤの高山帯に生息する大型ネコ科動物だ。

IUCNレッドリストでは危急種(VU)とされており、推定個体数は2,710〜3,386頭まで減少している。

彼らを追い詰めている要因は一つではない。

気候変動による環境の変化、開発による生息地や獲物の減少、そして家畜被害をきっかけとした人とのあつれき。

高山に生きる静かな捕食者は、いま複数の圧力にさらされている。

WWFはこうした状況に対応するため、ヒマラヤ各地でユキヒョウ保全プロジェクトを展開してきた。

WWFジャパンも2021年から、WWFインドと連携し、西ヒマラヤでの活動を支援している。

現地で行なわれているのは、ユキヒョウやその獲物となる野生草食動物の生息状況調査、保全人材の育成、地域コミュニティとの連携強化など。

単に「動物を守る」だけではなく、その土地で暮らす人々とどう共に未来をつくるかまで含めた取り組みになっている。

札幌で開催された特別イベント

今回のイベントは、より多くの人にユキヒョウ保全の現場を知ってもらうために企画された。

会場は、ユキヒョウの飼育と繁殖にも取り組む札幌市円山動物園。対面参加に加え、ライブ配信も実施された。

登壇したのは、西ヒマラヤで実際に保護活動を指揮しているWWFインドのリシ・シャルマ

現場で起きていることを、そのまま日本の参加者に届ける機会となった。

また、円山動物園の動物専門員による解説も行なわれ、野生での保全と動物園での飼育・繁殖という、異なる立場からユキヒョウの未来を考える構成になっていた。

円山動物園が語った、ユキヒョウの生態と繁殖

イベントではまず、円山動物園の動物専門員・小林真也氏が、ユキヒョウの生態や国内での繁殖状況について紹介した。

現在、日本国内で飼育されているユキヒョウは14頭

そのうち6頭は10歳以上の高齢個体で、繁殖可能なのは4ペアに限られるという。

円山動物園ではそのうち2ペアを飼育しており、繁殖期である冬期には個体の状態を見ながら繁殖に取り組んでいる。

イベント中盤には実際にユキヒョウ舎へ移動し、採食する様子を見ながらの解説も行なわれた。

雪景色の展示場で過ごすユキヒョウの姿は、野生の高山環境をどこか思わせるものだったかもしれない。

西ヒマラヤで何が起きているのか

続いて登壇したリシ・シャルマは、西ヒマラヤの野生生物と、現地で進められている保護活動について報告した。

西ヒマラヤには、ユキヒョウだけでなく、その獲物となる野生の草食動物を含め、多様な命が暮らしている。

しかしその生態系は、いま地球温暖化の影響を強く受けている。

たとえば、暖冬によって降雪パターンが不規則になると、ユキヒョウの生息地が狭まり、ほかの動物がこれまで以上に高地へ入り込むことで、行動圏の重なりや衝突が起きやすくなる。

さらに、西ヒマラヤでは移牧を営む人々も、気候変動の影響を受けながら暮らしている。

収入が不安定になると、生活を支えるために家畜を増やす家庭もある。すると、家畜が草地を広く使うようになり、ユキヒョウの獲物となる野生の草食動物が利用できる餌場が減ってしまうのだ。

その結果、獲物を失ったユキヒョウが家畜を襲い、報復として殺される。

ここには、単純な「野生動物の問題」では済まない、人と自然の複雑な関係がある。

「人の暮らしがある」保全

今回のイベントで印象的なのは、リシ・シャルマが語った保全の前提だ。

ユキヒョウがいる場所には、同時に人の暮らしもある。

だからこそ、ただユキヒョウだけを見ればいいわけではない。

人が出ていけばいい、ユキヒョウを追い出せばいい、という話でもない。

そこにある暮らしや思いを理解し、地域の人々と関係を築きながら進めることが、保全には欠かせない。

WWFインドが行なっている調査や啓発、地域支援の積み重ねによって、現地ではユキヒョウや保護活動へのイメージが少しずつ改善し、相談を受けられる信頼関係も育ってきているという。

この話は、ユキヒョウ保全が「希少な動物を守る活動」にとどまらず、高山生態系と人間社会の関係をどう整えていくかという課題でもあることをよく示している。

日本からできることもある

イベント後半では、WWFジャパンのスタッフから、日本に暮らす私たちにできることも紹介された。

その一つが、地球温暖化を防ぐための行動だ。

西ヒマラヤの変化は遠い場所の出来事に見えるかもしれないが、温暖化の原因となる二酸化炭素排出は国境を越えてつながっている。

再生可能エネルギーの導入や節電といった行動は、一見すると日常の小さな選択に見える。

けれど、そうした積み重ねが、ユキヒョウをはじめとする高山生態系の未来にもつながっていく。

また、WWFジャパンは野生動物アドプト制度を通じて、このユキヒョウ保全活動への支援も呼びかけている。

ネコの日に見えたもの

今回のイベントは、ユキヒョウの可愛さや希少性を伝えるだけの場ではなかった。

そこにあったのは、雪山の頂に生きる一種のネコ科動物を通して、気候変動、地域の暮らし、保全のあり方、そして日本からの関わり方までを考える時間だった。

ユキヒョウの未来を守るということは、ただ一種を残すことではない。

その背後にある高山生態系と、そこに暮らす人々の営みを含めて守ろうとすることでもある。

遠いヒマラヤの話に見えても、まったく無関係ではない。

ネコの日に札幌で広がったこの保全の輪は、そのことを静かに教えてくれる出来事だった。

出典:WWFジャパン「ユキヒョウ保全の輪を日本へ!特別イベント『ネコの日に知りたい、ユキヒョウと地球のはなし』を開催しました」

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この記事を書いた人

野生に生きる「ネコ科図鑑」管理人です。トラ・マヌルネコに偏愛

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