【ヒマラヤ高地】標高5,000mでマヌルネコを初確認

WWFジャパンによると、東ヒマラヤのアルナーチャル・プラデーシュで、標高5,000m近い高地で初めてマヌルネコが確認されました。

本調査はWWFインドとインド政府が地域住民と協力して実施したものです。

本記事内の写真は掲載しておりません。実際の写真はWWF公式サイトをご覧ください。

5,000m近い高地での歴史的発見

調査が行われたのは、東ヒマラヤのアルナーチャル・プラデーシュ

標高5,000m近いこの山岳地帯で、カメラトラップによりマヌルネコが初めて確認されました。

撮影されたのは 標高4,992m地点

過去の最高記録である5,050mに迫る高度で、マヌルネコがヒマラヤ高地に適応していることを示す重要な発見です。

この調査は、WWFインドの生態学者 リシ・シャルマ(PhD) を中心に、地域住民とインド政府の協力によって行われました。

発見:多様なネコ科動物が高地に生息

今回確認されたのはマヌルネコだけではありません。

調査チームは、標高4,000〜6,000mの高地で合計5種のネコ科動物の記録に成功しました。

確認されたネコ科動物(記録標高)

  • ユキヒョウ:約6,000m
  • ヒョウ:4,326m(インドで初、世界でも最高レベルの高標高記録)
  • ウンピョウ:4,650m
  • マーブルキャット:4,326m
  • ベンガルヤマネコ

さらにネコ科以外にも、

  • ミヤマフクロウ(4,194m)
  • ハイイロモモンガ(4,506m)

といった高地動物も確認され、多様な生物が厳しい環境に適応していることが明らかになりました。

高標高での複数種の記録は、生態系の豊かさと複雑さを示す重要な手がかりです。

課題:高地生態系の脆さと人との接点

カメラトラップには、野生動物だけでなく、地元ブロクパの牧畜民と家畜の姿も写っていました。

これは、何世紀も続く「人と野生動物の共存」の一端を示しています。

しかし、気候変動による植生変化、家畜との競合、生息地の縮小など、ヒマラヤ高地の生態系は非常に脆弱です。

特に、標高帯の変化が捕食者・被食者の分布を急速に変える可能性が指摘されており、継続的なモニタリングが必要です。

地域住民と科学の協力による保全モデル

WWFインドは、科学的な調査とともに、地域住民と協力した地域主導型の保全活動を展開しています。

リシ・シャルマ博士は次のように述べています。

「この地域が多様な野生動物と活気ある牧畜文化を共に支えている事実は、科学と地域の知恵に根ざした保全の重要性を示している」

東・西ヒマラヤの両地域では、

  • カメラトラップ調査
  • 野生動物と家畜の衝突軽減
  • 地域文化を尊重した生態系保全

が進められています。

高地生態系の保全が示す希望

今回の発見は、ヒマラヤ高地の生態系が依然として未知に満ち、多様な生命が共存していることを示しています。

特に、

  • マヌルネコの高地適応
  • ヒョウの高標高記録
  • 住民と野生動物の共存文化

は、保全の将来に向けた大きな示唆となります。

地域文化と科学の協働が進むことで、野生動物と人がともに生きる高地の未来がより明るいものになる可能性があります。

ネコ科図鑑管理人の見解

ヒマラヤの高地でこれほど多様なネコ科動物が記録されたことは、単なる“希少種の発見”ではなく、生態系の立体性を示す非常に重要な事例です。

特に注目したいのは以下の点です。

  • 高標高帯での分布は、種の生理的限界を知る重要なデータ
  • 人と動物が共存する「牧畜文化の残る景観」は、現代では貴重
  • 多様な捕食者が存在することは生態系のバランス維持に不可欠
  • 気候変動が高山帯に及ぼす影響は早く、今後の分布変動の指標となる

今回の記録は、
「ヒマラヤはまだ十分に知られていない」
という事実を再確認させるものです。

今後も現地の調査結果を追いながら、日本の読者にわかりやすく翻訳し、野生ネコの世界を伝えていきたいと思います。

Source: WWF

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この記事を書いた人

野生に生きる「ネコ科図鑑」管理人です。トラ・マヌルネコに偏愛