
- 学名: Leopardus jacobita(レオパルドゥス・ヤコビタ)
- 英名: Andean cat/Andean mountain cat
- 分類: ネコ科オセロット属
- 体長: 約57〜85cm
- 尾長: 約41〜48cm
- 体重: 約4kg
- 寿命: 野生での寿命は不明/飼育下の記録も限られる

- 学名: Leopardus jacobita(レオパルドゥス・ヤコビタ)
- 英名: Andean cat/Andean mountain cat
- 分類: ネコ科オセロット属
- 体長: 約57〜85cm
- 尾長: 約41〜48cm
- 体重: 約4kg
- 寿命: 野生での寿命は不明/飼育下の記録も限られる
- 南米アンデス高地にだけ暮らす希少な野生ネコ
- 乾燥した岩場の山岳地帯でひっそり生きる
- ビスカチャなど高地の齧歯類を主に狩る
- 世界でも「情報が少ないネコ科」の代表格
アンデスネコの名前と分類

アンデスネコの名前の由来
アンデスネコは、南米アンデス山脈の高地に生息することからその名がついた野生ネコです。
英語では Andean mountain cat、スペイン語圏では gato andino(アンデスのネコ)など、分布地域の言語に合わせた呼び名で呼ばれます。
Leopardus属での立ち位置
アンデスネコは、オセロットやマーゲイなどと同じ Leopardus属の小〜中型ネコ科に属します。
その中でも特に「高地の岩場」に強く依存するタイプで、観察記録が少なく、生態がまだ十分に解明されていない最難関クラスの野生ネコとして知られます。
アンデスネコはどこにいる?

アンデスネコの分布

分布はアンデス山脈の高地に限られ、主に次の国で記録されています。
- ペルー(中南部)
- ボリビア
- チリ(北部)
- アルゼンチン(北部)
アンデスネコが暮らす環境
アンデスネコは、森林ではなく*乾燥した高地の岩場(ロックアウトクロップ/ロケダル)を中心に暮らします。
洞窟や岩の割れ目を隠れ家にし、近くに湿地(ボフェダル)や小さな水場がある環境で見つかることが多いのが特徴です。
アンデスネコ特有の条件
アンデスネコが生きるには、次の条件がそろうことが重要です。
- 標高の高い寒冷・乾燥地:厳しい環境で暮らす
- 岩場+裂け目・洞窟:身を隠せる物が必須
- 主な獲物がいること:特に岩場に依存する齧歯類
- 生息地が点在しやすい:岩場が連続しないため
アンデスネコの見た目

見た目の特徴
アンデスネコは、岩だらけの高地に溶け込むような灰色〜灰褐色の長毛を持つネコです。
体側には暗色の斑や帯が入り、顔には目尻から頬へ伸びるラインが見えます。
鼻や口まわりが黒っぽいのも特徴のひとつです。
チャームポイントの尻尾
いちばん分かりやすいチャームポイントは、とても長くて太いふさふさの尾です。
体長に対して尾が長く(目安で頭胴長の約66〜75%)、6〜9本の太いリング状の黒帯が入ります。
岩場での移動や狩りのとき、バランスを取るのにも役立つと考えられています。
柄の特徴
体の模様は、ロゼット(輪)というより斑点やまだら、帯状の模様が混ざるタイプで、個体によって濃淡があります。
幼獣は模様が濃く小さめに見えることもあります。
コロコロ(パンパスキャット)との見分け方
アンデスネコはコロコロ類と見た目が似ていて、野外で混同されやすい種です。
識別の助けになるポイントは次のとおりです。
- 鼻の色:アンデスネコは黒っぽい/コロコロはピンク寄り
- 尾:アンデスネコは太くて長い+太いリングが6〜9本
- 全体の印象:アンデスネコは長毛で“もこもこ”、コロコロは毛色・模様のバリエーションが大きいと整理されることがあります
アンデスネコの生態
アンデスネコは何を食べる?
アンデスネコの食性は、岩場に住む中型げっ歯類「マウンテンビスカチャ」への依存が非常に強いことで有名です。

ほかにも状況に応じて小型哺乳類、鳥類、爬虫類などを食べることがあります。
アンデスネコはチンチラ類を食べていた?
「昔はチンチラ類への依存が大きかった可能性がある」という整理が紹介されることがあります。高地で同じ岩場環境にすむ獲物が、過去の狩猟圧などで減った結果、現在はビスカチャ中心になっている―という文脈です。
※地域や時期で確実性に幅があるため、あくまで可能性として紹介します。
アンデスネコの狩りスタイル
狩りの主戦場は岩場です。
裂け目や岩陰を使って接近し、獲物が出てくるタイミングで捕らえるタイプと考えられています。
長く太い尾は、岩場での移動や姿勢の安定に役立つとされています。
アンデスネコの繁殖・子育て
野生での繁殖情報は限られていますが、観察や推定では1回の出産が1頭(または1〜2頭)とされることが多く、増え方がゆっくりな種として扱われます。
近年の現地観察から「年に1回程度の繁殖かもしれない」といった見立ても報告されています。
アンデスネコの暮らしはほとんど分かっていない?
アンデスネコが“情報が少ないネコ科”と呼ばれるのは、希少だからだけではありません。
生息地が高地で過酷、しかも分布が点在し、密度も低いと考えられているため、継続観察が難しいのです。
結果として、行動圏・社会性・繁殖の詳細などは、まだ埋まっていない部分が多く残っています。
アンデスネコの脅威と保全

アンデスネコは「珍しい」だけでなく、生息地が点在し密度も低いと考えられているため、見つけにくさが保全の難しさにつながります。
だからこそ、脅威の整理と、現地で積み上げられてきた保全活動をセットで知っておくことが重要です。
アンデスネコの保全状況
アンデスネコはIUCNレッドリストでEN(Endangered:絶滅危惧)に分類され、成熟個体数は2,500頭未満、最大のサブ個体群も小さいとされます。
個体数は今後も減少が続くと推定されています。
また国際取引はCITES附属書Iに掲載され、商業目的の国際取引は原則として強く制限されます。
分布4か国(アルゼンチン/ボリビア/チリ/ペルー)で法的保護が進む一方、広大で遠隔な高地ゆえに、実際の監視・執行や地域の合意形成が課題になりやすい種です。
アンデスネコの毛皮や剥製が儀礼に使われる?
アンデスネコは、地域によって「山の精霊や豊穣と結びつく特別な存在」として扱われてきました。
伝統的な儀礼では、毛皮や剥製がシンボルとして用いられる例が報告されています。
AGA(後述)の戦略資料でも、伝統的狩猟や儀礼利用を“対立”ではなく“合意形成と教育の対象”として扱っています。
ここで重要なのは、文化を一方的に否定するよりも、現地の人びとが大切にしてきた価値観を尊重しつつ、生きたままのアンデスネコを守る形へ移行できるかという点です。
アンデスネコの脅威
脅威は大きく「生息地側の変化」と「人為的な死亡要因」に分けて考えると分かりやすくなります。
- 資源開発・インフラ拡大(鉱山、道路など)
高地の乾燥地では、道路や施設が増えるだけで分断が強まり、移動や採餌に影響が出ます。近年は気候変動と合わせて、複合的な圧力として語られることも増えています。 - 獲物(特にビスカチャ等)の減少
主食に強く結びつくため、獲物側の減少はそのままアンデスネコの生存率に直結しやすいと考えられます。 - 犬の影響(攻撃・攪乱)/感染症リスク
放し飼い犬の増加や、人の活動域の拡大は、直接の襲撃だけでなく病原体の持ち込みリスクも高めます。 - 狩猟・伝統利用・局地的な違法取引
地域の文化・儀礼との関係があり、単純な「禁止」で終わらない難しさがあります(次項で詳述)。
アンデスネコの保全活動
アンデスネコの保全は、派手な単発プロジェクトというより「調べる」「守る」「共存する」を地道に重ねるタイプです。
代表的な柱は次の通りです。
- 調査・モニタリング:カメラトラップ、糞DNAなど
- 生息地保全と回廊(コリドー)の発想:点在する岩場環境をつなぐ
- 地域コミュニティとの協働:教育、見守り、合意形成
- 犬・家畜管理、獲物資源の保全:間接的な圧力の低減
見えない野生ネコをどうやって保全する?
アンデスネコは目撃が少ないため、「見つけて守る」ではなく、痕跡で守る発想が中心になります。
- カメラトラップ
岩場の通り道、獲物の出やすい場所に設置して存在確認と活動パターンを推定 - 糞DNA(スキャット解析)
糞から種判定・個体識別・遺伝的多様性・食性まで追える(見えなくても情報が取れる) - 聞き取りと共同監視
地元の牧畜者やレンジャーの知見を、科学調査と接続して精度を上げる - いそうな地形のモデル化
岩場の険しさや湿地の位置などから優先保全エリアを絞り込む(限られた資源を効かせる)
アンデスネコの保全団体
AGA

中核となるのがAndean Cat Alliance(Alianza Gato Andino:AGA)です。
1999年に設立された4か国横断のネットワークで、調査研究、保全、環境教育を軸に、アンデスネコと生息地を守る活動を進めています。

CatSG

IUCNのCat Specialist Group(CatSG)も種の状況整理や情報発信の重要な拠点です。
アンデスネコの希少性(成熟個体数・サブ個体群の小ささ・点在分布)を明確に示しています。

日本にいる私たちにできることは?
現地に行けなくても、保全に寄与できる行動はあります。
ポイントは「需要を生まない」「信頼できる活動を支える」「情報を正しく広める」です。
- 信頼できる団体を支援する
AGAのように現地連携で動ける組織への寄付・情報拡散 - 野生動物由来の毛皮・剥製・違法ペットを買わない
需要を生まない行動をしましょう - “希少でかわいい”だけで終わらせない共有
可愛いだけではない特性や脅威まで共有しましょう - エシカルな旅・学びの姿勢
アンデス地域を訪れる際には、野生動物に配慮した事業者・地域に利益が残る仕組みを選ぶ
アンデスネコ Q&A

Q. アンデスネコはどれくらい珍しい?
IUCNでは絶滅危惧で、成熟個体数が少なく、点在分布のため出会いにくい種です。
Q. 似ているコロコロ(パンパスキャット)とどう違う?
尾の太さとリング模様、鼻色などが手がかりになりますが、野外同定が難しいケースもあり、調査ではDNAやカメラトラップが使われます。
Q. 何が一番の脅威?
地域差はありますが、生息地の分断、資源開発・道路、獲物減少、犬の影響、文化的利用などが重なって効くのが難しさです。
Q. 保全は進んでいるの?
4か国横断でAGAが中心となり、調査・教育・共存策を組み合わせた取り組みが続いています。
読者へのメッセージ

ここまで読んでいただきありがとうございます。
アンデスネコは可愛いビジュアルに目が行きがちですが、ただ「希少でかわいい」だけの存在ではありません。
厳しい高地で、岩場と獲物に支えられながら生き、地域の文化とも深く結びついてきた、特別な野生ネコです。
保全は、遠い国の話に見えても、私たちの選択と無関係ではありません。
野生動物由来の製品を選ばない、信頼できる団体の活動を支える、正しい情報を広める―こうした小さな行動の積み重ねが、見えにくい野生ネコを見守る力になります。
アンデスの岩場で静かに生きるこのネコが、これからも同じ景色の中で暮らし続けられるように。この記事がきっかけになれば嬉しいです。
