ハイイロネコ図鑑|

出典:Wikimedia Commons(Abujoy)CC BY-SA 3.0
  • 学名: Felis bieti(フェリス・ビエティ)
  • 英名: Chinese mountain cat/Chinese desert cat/Chinese steppe cat  
  • 分類: ネコ科 ネコ属(Felis)  
  • 体長: 約60〜85cm(頭胴長)  
  • 尾長: 約29〜35cm  
  • 体重: 約5.5〜9kg  
  • 寿命: 不明(野生での確かなデータが限られる)  
出典:Wikimedia Commons(Abujoy)CC BY-SA 3.0
  • 学名: Felis bieti(フェリス・ビエティ)
  • 英名: Chinese mountain cat/Chinese desert cat/Chinese steppe cat  
  • 分類: ネコ科 ネコ属(Felis)  
  • 体長: 約60〜85cm(頭胴長)  
  • 尾長: 約29〜35cm  
  • 体重: 約5.5〜9kg  
  • 寿命: 不明(野生での確かなデータが限られる)  
ハイイロネコってどんな動物?
  • 中国の高地にだけ暮らす野生ネコ  
  • 寒くて乾いた高原に適応  
  • 「中国砂漠猫」と呼ばれることもある
目次

ハイイロネコの名前と分類

ハイイロネコの名前の由来

ハイイロネコは、英語では Chinese mountain cat(中国の山のネコ) と呼ばれます。

資料によっては Chinese desert cat(中国砂漠猫)Chinese steppe cat(中国ステップのネコ) など別の呼び名も出てきます。

ただし「砂漠猫」という呼び方は実態とズレがあり、現在わかっている生息地は“砂漠のど真ん中”というより、チベット高原周辺の草原や高山帯が中心です。 

学名 Felis bietibieti は、フランス人宣教師 Félix Biet にちなんで付けられたとされています。 

ハイイロネコの分類

分類はネコ科(Felidae)/ネコ属(Felis)/種:Felis bieti として扱われます。

一方で、研究史の中では「ヨーロッパヤマネコ類(Felis silvestris)の亜種」として扱われた時期もあり、文献によって分類表記が揺れて見えることがあります。 

Felis属での立ち位置

Felis属には、ヨーロッパヤマネコ類やスナネコなど“旧世界の小型ヤマネコ”がまとまっています。

ハイイロネコはその中でも、中国の高地に特化した固有の系統として語られることが多い種です。

また、分布域の一部ではイエネコとの遺伝的な混ざり(遺伝子浸透)も報告されており、「純粋な個体群をどう守るか」という点が保全面の重要テーマになります。 

ハイイロネコはどこにいる?

ハイイロネコの分布

ハイイロネコは 中国固有の野生ネコです。

確認されている主な分布は、チベット高原の北東縁に沿うエリアで、特に 青海四川北西部などでの記録が多いとされています。 

ハイイロネコが暮らす環境

暮らしの舞台は、高地のステップ草原・高山草原(アルパインメドウ)・高山性の低木林(アルパインシュラブ)、そして針葉樹林の縁(森の端)のような場所です。

「砂漠のネコ」と呼ばれることがありますが、本当の砂漠での確実な記録はないとされています。

むしろ高地の草原・低木帯に強く結びつくネコとして理解するとイメージがブレません。 

ハイイロネコ特有の条件

ハイイロネコが生きる場所は、標高が高く、季節の寒暖差や乾燥、強風など環境の振れ幅が大きい高原です。

こうした土地では、獲物になりやすい小型哺乳類(ナキウサギ類など)が多い環境が“暮らしやすさ”に直結します。

その一方で、高原ならではの人の営み(放牧・害獣対策など)や、集落周辺で増えやすいイエネコとの接点が、個体群の将来に影響しうる条件として注目されています。 

ハイイロネコの見た目

出典:Wikimedia Commons(西宁野生动物园)CC BY-SA 3.0

ハイイロネコの身体の特徴

ハイイロネコは、体つきはイエネコに近いサイズ感ですが、寒冷な高地に適応した厚めの毛並みが印象的です。

耳の先が黒っぽく見え、足裏には毛が生えていて、冷えた地面でも歩きやすい作りになっています。尾は短すぎず長すぎずで、リング模様と黒い先端が識別のヒントになります。 

ハイイロネコの柄

全体の色は砂色〜灰褐色系です。

体の模様ははっきりしたロゼットというより、うっすらした縞や斑が出る程度のことが多いとされています。

顔や脚に薄い横縞が見える個体もいます。 

ハイイロネコの体の大きさ

成獣は、頭胴長がおよそ60〜85cm、体重は約5.5〜9kgほどとされています。

概ね「イエネコより少し大きい」サイズです。 

イエネコとの違い

外見だけで決めつけにくいこともありますが、目安としては次の点が手がかりになります。

  • 分布が中国の高地に限られる(日常的な人里で見かける種ではない) 
  • 尾に複数の黒いリング+黒い先端がはっきり出やすい 
  • 研究では、分布域の一部でイエネコとの遺伝的な混ざりも報告されており、「見た目だけで完全に区別できない」ケースもあります。 

ハイイロネコの生態

ハイイロネコは何を食べる?

主食は高原に多い小型哺乳類です。

特にモグラネズミ類(zokor)やナキウサギ類(pika)などが重要な獲物として挙げられます。

鳥類などを食べることもあるとされます。 

ハイイロネコの狩りスタイル

ハイイロネコの狩りは、高地の小動物に合わせた耳の良いハンターであることが特徴です。

CatSGでは、地中を動くモグラネズミ類の気配を聞き取り、掘り出して捕える行動が紹介されています。 

ハイイロネコの繁殖・子育て

繁殖期は1〜3月ごろとされ、出産は5月ごろに多いと考えられています。

子どもは2〜4頭という情報が多く、7〜8か月ほどで独立する、とされています。 

また、野外での繁殖巣(デン)をカメラトラップで確認した研究もあり、少しずつ生活史の情報が積み上がっています。 

ハイイロネコの観察難易度

ハイイロネコは「見えない野生ネコ」の代表格で、野外で直接観察するのは非常に難しい種です。

そのため調査は、カメラトラップGPS首輪などを組み合わせて活動時間帯を推定する手法が中心になっています。 

ハイイロネコの脅威と保全

ハイイロネコの保全状況

ハイイロネコは、IUCNレッドリストでVulnerable(VU:絶滅危惧)に分類され、個体数は多くないうえに減少傾向が懸念されています。 

法規制面では、CITES附属書IIに掲載され国際取引が規制されています。 

また中国国内でも保護が強化され、国家重点保護野生動物(Class I)に引き上げられたことが報じられています。 

ハイイロネコの脅威

主な脅威は「暮らしの場」と「獲物」を同時に削ってしまう要因です。

具体的には、放牧やインフラ開発による生息地の劣化・分断、そして駆除目的の毒餌などに伴う獲物(ピカ等)の減少二次被害(捕食者側の中毒)が大きいと整理されています。 

加えて、毛皮目的のローカルな狩猟、ロードキル、イエネコ由来の遺伝子浸透(交雑)リスクも課題として挙げられます。 

ハイイロネコの保全活動

ハイイロネコの保全はなぜ難しい?

ハイイロネコ(中国山猫)は、人が頻繁に立ち入らない高地に広く分布し、姿を見つけること自体が難しい野生ネコです。

しかも放牧地や集落の近くでも記録されるため、「人の暮らしと重なる場所で起きる問題(ロードキル、犬、病気など)」が無視できません。

さらに、密度・行動圏・繁殖など基礎データの蓄積が限られており、効果的な優先順位づけには継続的なモニタリングが欠かせない状況です。

現地で進む「調査・モニタリング」

希少で目撃が少ない種ほど、「どこに、どれくらいいるかを確かめる」ことが保全の出発点になります。

現地では、個体に負担をかけにくい方法を組み合わせて情報を積み上げています。

  • カメラトラップ調査
    出現地点・活動時間・親子の記録などを蓄積
  • 糞DNAなどの非侵襲調査
    個体識別や分布確認に活用
  • 分布の更新
    「いる場所」を地図に落とし、重点地域を見える化
  • 基礎データの積み上げ
    行動圏、繁殖、季節変動など

脅威を減らす取り組み

生息地の保全・分断対策

道路や土地利用の変化で生息地が細切れになると、移動が増え、事故や衝突が起きやすくなります。

重要エリアの保護とあわせて、移動経路(回廊)を意識した土地利用の調整が重要です。

獲物と食物連鎖への配慮(毒餌・駆除の影響)

高地では、害獣対策としての毒餌や駆除が、生態系全体に波及しやすいと指摘されています。

獲物の減少や二次被害が起きない方法へ切り替えることが、間接的にハイイロネコを守ることにつながります。

人為的死亡の低減

事故が多い区間を把握し、速度抑制や注意喚起、通過路の整備を検討するのが基本です。

希少種は「少数の事故」が個体群に効きやすいので、点ではなく線で対策する発想が有効です。

人と共存するための地域協働

現地で機能しやすいのは、「敵にしない」関係づくりです。

誤解や不必要な駆除を減らすには、住民側が「どう対応すればよいか」を共有し、合意形成していくことが重要になります。

  • 目撃時の対応・通報のルール化
  • イエネコ・イヌの管理で衝突・感染症リスクを下げる(放し飼い抑制、ワクチン等)
  • 地域にメリットが残る仕組みの設計(適切な観察・エコツーリズム等)

ハイイロネコの保全団体

Shan Shui Conservation Center(山水自然保護中心)

出典:https://en.shanshui.org/

中国の野生動物保全団体で、ハイイロネコの野外情報の蓄積に関わる研究報告が確認されています(繁殖巣の発見報告など)。

Valley of the Cats

出典:https://www.valleyofthecats.org.cn/Home/EnIndex/index.html

コミュニティベースの野生動物観察・保全の文脈で紹介されており、地域協働(住民参加)型で記録が蓄積される枠組みとして参照できます。

IUCN SSC Cat Specialist Group

出典:https://www.catsg.org/

団体というより国際的な専門家ネットワークで、保全上の位置づけ、分類、脅威など一次情報への入口として使いやすい組織です。

Small Cat Conservation Alliance

出典:https://smallcats.org/

小型野生ネコに特化した国際NPOとして紹介されており、種の啓発や支援の窓口になり得る組織です。

日本にいる私たちにできること


日本からできることは、遠くの高地で進む現場の積み重ねを後押しすることです。

調査や地域協働を支える団体を応援したり、信頼できる情報を広めたりするだけでも、ハイイロネコを守る力につながります。

  • 信頼できる情報源(IUCN/CatSG、現地団体、査読論文)を追い、誤情報を広げない
  • 寄付・支援に参加する
  • 「希少種をペットにする」需要を肯定しない

ハイイロネコ Q&A

ハイイロネコと会うにはどうしたらいい?

日本国内の動物園で一般的に見られる種ではありません(少なくとも2026年1月現在の主要な公開情報では確認しづらい状況です)。

海外での飼育個体については、中国の西寧野生動物園(Xining Wildlife Park/XiNing Wild Zoo)での記録が知られています。

野生下での目撃はかなり難しく、観光目的で「探しに行く」より、調査・保全の発信(団体や研究の報告、カメラトラップ映像)で出会うのが現実的でしょう。 

ハイイロネコをペットにできる?

できません。

希少な野生ネコであり、国際取引はCITES附属書IIの枠組みで規制され、そもそも飼育に適した動物でもありません。 

ペット目的の需要は密猟や違法取引を助長しやすいため、記事では「飼う」ではなく「守る/知る」方向で案内するのが安全です。

読者へのメッセージ

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ハイイロネコは、中国の高地で暮らす希少な野生ネコで、姿が見えにくいからこそ「調査で存在を確かめること」自体が保全になります。

カメラトラップや糞DNA、地域協働の積み重ねが、脅威を減らす土台です。

日本からは「信頼できる情報を追い、支援先を選び、希少種のペット需要を肯定しない」その一つひとつが守る力につながります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

野生に生きる「ネコ科図鑑」管理人です。トラ・マヌルネコに偏愛

目次