ネパール政府が2026年7月29日の「世界トラの日」に発表した最新の全国調査で、国内に生息する野生のベンガルトラの個体数が推定429頭に達したことが明らかになりました。
2022年の前回調査では355頭と推定されており、4年間で74頭、約21%増加したことになります。
ネパールでは2010年に推定121頭だった野生のトラが、2014年には198頭、2018年には235頭、2022年には355頭まで回復していました。
今回の429頭という結果により、2010年と比較すると個体数は3倍以上になっています。
- ネパールの野生トラは、2022年の355頭から2026年に推定429頭へ増加
- 2010年の121頭と比べると、16年間で3倍以上に回復
- 5つの主要生息地域のうち4地域で増加した一方、バルディアでは125頭から112頭へ減少
- 個体数回復が進む一方、人とトラの衝突や生息地の質の維持が今後の課題
最新調査で推定429頭を確認

今回発表されたのは、ネパール政府による「National Tiger and its Prey Base Survey 2026」の調査結果です。
調査はネパール国立公園・野生生物保全局(DNPWC)などが中心となり、国立自然保護基金(NTNC)、ZSL Nepal、WWF Nepalなどの団体も協力して実施されました。
カメラトラップによる調査は、トラが生息する5つの国立公園とその周辺森林を対象に実施。
2025年12月から2026年4月23日にかけて、7,393平方キロメートルの範囲に3,696台の自動撮影カメラが設置されました。
撮影されたトラの写真は11,911枚にのぼり、体の縞模様から373個体のトラが識別されました。
そのデータを空間明示型捕獲再捕獲法(SECR)で解析した結果、ネパール国内の個体数は429頭と推定されています。
ネパール内5つの国立公園別ではチトワンが最多の145頭
今回の調査で推定されたトラの個体数は、以下の通りです。
- チトワン国立公園:145頭
- バルディア国立公園:112頭
- パルサ国立公園:71頭
- バンケ国立公園:51頭
- シュクラファンタ国立公園:50頭
最も多かったのはチトワン国立公園とその周辺地域の145頭でした。
2022年の調査と比較すると、
- チトワン:128頭 → 145頭
- パルサ:41頭 → 71頭
- バンケ:25頭 → 51頭
- シュクラファンタ:36頭 → 50頭
と、4地域で個体数が増加しています。
一方、バルディアでは125頭から112頭へ減少しました。
そのため、ネパール全体では個体数が増加しているものの、すべての生息地で一様に増えているわけではありません。
2010年の121頭から3倍以上に

ネパールでは、2010年にロシア・サンクトペテルブルクで開催された「世界トラサミット」で掲げられた、野生トラの個体数を倍増させる国際目標「Tx2」に参加しました。
当時、ネパール国内の野生トラは推定121頭。
その後の全国調査では、
- 2010年:121頭
- 2014年:198頭
- 2018年:235頭
- 2022年:355頭
- 2026年:429頭
と増加してきました。
ネパールは2022年の時点で355頭に達し、2010年の121頭から個体数を倍増させる目標をすでに達成していました。
今回の調査では、そこからさらに74頭増加したことになります。
課題:トラの増加と人との共存
野生トラの回復が進む一方で、ネパールでは人とトラの衝突への対応も課題となっています。
ネパール国立公園・野生生物保全局のBed Kumar Dhakal氏はAFPに対し、今回のデータではトラの個体数が年平均約5%の割合で増加していると説明しています。
一方、政府データでは2019年から2023年の間に、トラによる攻撃で少なくとも38人が死亡したと報じられています。
個体数の増加を受け、ネパールの保全当局は今後の課題として、人と野生動物の衝突の軽減や、生息地の質の改善などを挙げています。
WWF Nepalも、トラの個体数だけでなく、人と野生動物が共に暮らしていくための取り組みを進める重要性を示しています。
野生トラ回復の次の段階へ
2010年の121頭から、2026年には推定429頭へ。
ネパールでは16年間で、野生のベンガルトラが3倍以上に増加しました。
しかし今回の調査では、バルディア国立公園で個体数が減少していることも確認されています。
全国の総数だけでなく、それぞれの生息地の状態を継続的に調査しながら、トラの生息環境と人との共存をどのように維持していくかが、今後の保全における重要な課題となります。
ネコ科図鑑管理人の見解
今回特に注目したいのは、単に「429頭まで増えた」という点だけではありません。
2022年から2026年にかけて全国の推定個体数は355頭から429頭へ増加していますが、地域別に見ると、増加幅には大きな違いがあります。
特にパルサでは41頭から71頭、バンケでは25頭から51頭へ増加した一方、バルディアでは125頭から112頭へ減少しました。
野生動物の保全を考えるうえでは、国全体の個体数だけを見るのではなく、
- どの地域で増えているのか
- どの地域で減っているのか
- 十分な生息地や獲物が維持されているのか
- 人とトラの衝突をどう減らしていくのか
といった視点で、今後の変化を追っていく必要があります。
ネパールのトラが今後も増加を続けるのか、それとも地域ごとに異なる変化を見せるのか。
ネコ科図鑑でも、今後発表される調査結果や保全活動を引き続き追っていきたいと思います。
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